起業時に知っておきたい資金調達の知識
今回は起業時の資金調達方法や資金調達の考え方について解説していきます。
自己資金、日本政策金融公庫の創業融資、地方自治体の制度融資、クラウドファンディングといったサービスやエンジェル投資家からのファンディングなど。
Googleで検索すれば創業手帳といったメディアに色々情報は掲載されていますし、認定支援機関といった国に認定された専門家も色々アドバイスをくれます。
ただ、あまり杓子定規でも実際の起業の現場で役に立たないなと感じていたので、今回は起業の現場の視点から起業時の資金について解説していきます。
【目次】
起業する時にいくら貯金があればいいか
・前提として間違えてはいけない事
・創業者が頼る2つの融資制度
・最近は地域銀行がプロパー対応する事も
日本政策金融公庫と制度融資の違い
・まとめ表
・借入限度額
・返済期限
・要件
・自己資金
・利率・保証料
・担保・保証人
・申し込みから入金の期間
起業する時にいくら貯金があればいいか
前提として間違えてはいけない事
起業する時にはいくら貯金があればいいのか?こういった質問をよくうける事があります。極端な答えになりますが、結論からいうと貯金は0円でもOKだと思います。
なぜなら、資金というのは事業を行いながら増やしていくものだからです。多くの起業家はお金が無くなって廃業してしまいます。
なぜなくなるのでしょうか?ただ単純に資金を増やす事ができず目減りしていってしまうからです。貯金をする事に時間を使うよりも、月々数万円でも利益を増やす事に力を入れるべきです。
貯金する為のお金を使って、少しでもお金を増やして行くという事を
貯金の属性によって必要な金額は変わる
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫とは国が運営する銀行の事です。日本政策金融公庫は創業者向けに「創業融資」という制度を行っています。
日本政策金融公庫は「創業者にお金を貸すこと」を使命としているので、創業者に対して積極的に融資をしてくれます。
制度融資
次は制度融資です。制度融資とは、保証協会が起業家の保証をしてくれます、保証協会には保証料という手数料を支払う必要があるのですが、その保証料や銀行に対する利息を自治体が補助してくれます。
保証協会も国の機関です。国と市区町村といった自治体が一体となって、起業家の資金調達を後押ししてくれるものが制度融資と言います。
地元の信用金庫等が窓口になって融資を行いますが、万が一起業家が返済出来なくなった時は保証協会が肩代わりしてくれます。
つまり、金融機関が融資を行ってはいますが、金融機関は全くリスクをしょっていないという事が保証協会付融資の仕組みとなります。
最近は地域銀行がプロパー対応する場合も
プロパー融資(銀行から直接お金を借りる事)も、最近は地域銀行は行ってくれる事が増えてきました。とはいえ、太陽光発電事業のような売上の見込みが固い事業のケースが多いです。
ソーラーパネルを設置すれば電力会社が安定的に電気を買い取ってくれるようなケースの場合、売上はすぐに安定しますから銀行としてはリスクが低いからです。
日本政策金融公庫と制度融資の違い
日本政策金融公庫は全国一律全て同じ条件です。一方制度融資の場合は、県や市といった自治体によって条件や利率が異なります。今回は千葉県の制度融資で解説していきます。
まとめ表
日本政策金融公庫 | 制度融資(千葉県の場合) | |
借入限度額 | 3,000万
運転資金は1,500万まで |
3,500万
運転資金は2,500万 |
返済期間 | 運転資金5年
設備資金10年~20年 |
運転資金5年
設備資金7年 |
要件 | 新たに事業を始める方
税務申告2期未満の方 |
創業5年未満の中小企業 |
自己資金 | ※1 必要額の1/10 | なし |
利息・保証料 計 | 2.2~2.8% | 1.45%~3.6% |
担保 | 不要 | 不要 |
代表者の保証人 | 不要 | 必要 |
申し込みから入金まで | 1カ月程度 | 2カ月程度 |
※1「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」等に該当する場合は、自己資金要件は不要です。
借入限度額
自治体によっても異なるでしょうが、日本政策金融公庫よりも制度融資の方が借入限度額は高い事が一般的です。詳細は本店所在地のある市区町村や県といった自治体に聞いてみるといいでしょう。
返済期限
従業員へ支払うお給料、事務所の家賃や仕入といった会社運営に関する経費に対する運転資金は日本政策金融公庫も制度融資も返済期間はあまり変わりません。
一方、車や機械、土地や建物といった設備に投資する場合の返済機関については、日本政策金融公庫は10年間ですが制度融資はそれよりも返済期間が短い事が一般的です。
要件
創業時の資金調達制度には要件がございます。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫の場合は、「事業主として税務申告をした回数が2回未満」の方が対象です。基本的には、個人事業主と会社を併せて2回以上税務申告をしていると対象にはなりません。
個人事業主で1回税務申告を行い、その後会社設立して1回税務申告をしてしまうと、合計2回税務申告している事になりますから、日本政策金融公庫の創業融資の対象外になります。
日本政策金融公庫は創業融資枠の対象外となっても、通常枠で融資を積極的にしてくれます。この場合、利息はあまり変わりませんが、無担保無保証という創業融資のメリットは無くなります。
千葉県の制度融資
それに対して今度は制度融資です。千葉県の制度融資の場合は創業から5期未満の中小企業が対象となっております。税務申告回数が4回までの個人事業主と会社が対象となります。
また、千葉県の制度融資を利用する場合、千葉県に事業所がある事が条件となります。制度融資の場合はその自治体の区域内に事業所がある事が条件になるので注意して下さい。
自己資金
日本政策金融公庫の創業融資は必要資金額の1/10は自己資金が必要となります。500万円必要な事業計画でしたら、50万円の自己資金が必要となるという事です。
日本政策金融公庫の創業融資には自己資金要件がありますが、現在勤めている仕事と同業で起業する場合や、自治体の起業支援事業(市が主催する起業セミナーなど)に参加した場合は免除されます。
一方、千葉県の制度融資の場合は自己資金要件は最初からありません。制度融資は千葉県だけではなく、東京都や市といった各自治体がやっています。それぞれ条件を確認してみてください。
「〇〇市 制度融資」と検索すれば詳しく出てきます。
但し、自己資金要件が無いからといって自己資金が無くても融資が通りやすいという訳ではありません。制度の対象となるというだけで、融資の審査は自己資金が多い方が有利になります。
利息・保証料
次は借入期間に発生するランニングコストです。金融機関から融資を受けると利息という費用を支払う必要があります。また、保証協会を利用した場合は信用保証料も必要になります。
日本政策金融公庫の利息は約2%程度です。信用保証料は必要ありません。一方制度融資の場合は、利息は1%程度ですが、信用保証料が発生し、合計2%程度のランニングコストが発生します。
制度融資の方が一見ランニングコストは安く見えますが、信用保証料を含めてトータルで考えると、正直どちらも大差がないというのが実際の所だと思います。
担保・保証人
日本政策金融の創業融資は担保・保証人は必要ありません。一方、制度融資はどこの自治体で申請をしても必ず代表者は保証人にならなければいけません。
個人事業主の場合は関係ありませんが、会社設立した場合は日本政策金融の創業融資の方がメリットが大きいと言えるでしょう。
会社には法人格がありますので、代表者が保証人にならない場合、万が一借入金を返済できない時でも会社の財産であるだけ返済すればよく、個人財産は守る事ができるのです。
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申し込みから入金までの期間
借入申し込み⇒審査⇒融資実行(入金)までの期間については、日本政策金融の方が圧倒的に早いです。これは何処の制度融資も同じです。日本政策金融公庫なら1カ月程度で全て終了します。
制度融資の場合は、金融機関・保証協会・自治体という複数の期間が関係して手続きを進めますのでどうしても2カ月程度の期間が必要となってしまいます。
日本政策金融公庫と制度融資どっちがいい?
日本政策金融公庫と制度融資どちらを選択するかについてですが、利用できるのであれば日本政策金融公庫の創業融資がオススメだと思います。
理由は、
・金利といったランニングコストは殆ど変わらない
・会社なら無担保無保証のメリットが大きい
・申し込みから審査まで早い
という3点です。
ランニングコストがあまり変わらないのであれば、無担保無保証の方が良いですし、融資手続きも早く済ませて本業に集中した方が良いですよね。
とはいえ、制度融資を利用するメリットが無い訳ではありませんので、ご興味がある方は関連記事をご覧ください。