登記における第三者対抗要件について
「~者は、(善意の)第三者に対抗出来ない」
法律を学んだ方であれば何度か目にした文言であるかと思います。これはいわゆる「第三者対抗要件」に関する条文で用いられる言い回しです。この第三者対抗要件とはどの様なものか、皆さんは正確にご存知でしょうか?
本記事では、特に登記における第三者対抗要件の概要について詳しくご紹介します。
「対抗要件」って何?
「対抗要件」とは法律要件(一定の法律効果を生じる為に要求される事実)の1つで、「当事者間で成立済みの法律関係・権利関係を当事者以外の第三者に対して主張する為の法律要件」のことを意味します。
対抗要件は、物件・債権の譲渡や不動産賃借など、権利変動の生じる場面でよく問題となります。その中でも今回は、特に登記における対抗要件について詳しく見てみましょう。
登記における第三者対抗要件
それでは、登記における第三者対抗要件に関する取り決めについて、登記の種類ごとに見てみましょう。
A:不動産登記における第三者対抗要件
民法177条には以下の様な定めがあります。
「不動産に関する物件の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
不動産登記における二重譲渡
不動産登記における第三者対抗要件で度々話題となるのが、「二重譲渡」に関する問題です。
二重譲渡とはその名の通り、同一物を複数の者に譲渡することを指します。
<例>AがBに不動産を譲渡した後、Aが同じ不動産をCに譲渡した場合
この場合、登記の完了時期と不動産の所有権との関係は以下の様になります。
・B/C共に未登記のまま―B、C共に相手に対して所有権を主張できない。
・B/C一方の登記が先に完了する―先に登記手続きを完了させた側が、所有権を取得出来る
ちなみにAによる二重譲渡が可能なのは、譲渡時点で「Aが不動産の所有者である」旨の登記がまだ残っているからです。
B:商業登記における第三者対抗要件
商法9条には、以下の様な内容が記載されています。
「第三者に「正当な事由」がある場合は、当事者はその善意の第三者に対抗できない。~さらに、故意または過失により不実の登記をした者は、不実を理由として善意の第三者に対抗できない」
ここでいう所の「善意の第三者」とは、
「登記事項である事実・法律関係を知らなかった者」を指します。商業登記においては、登記事実を知らなかったことに過失があった場合であっても、その者は保護対象となります。
また第三者が善意か否かは、取引行為が行われた時点を基準とするとされています(ただし、第三者が登記事実を知ろうとしても出来ない状況にあった場合は別)。