会社設立するなら知っておきべき補助金の落とし穴
会社設立代行業者や会計事務所などを調べていると、「補助金・助成金に強い」といった謳い文句をご覧になるだろうと思います。この内、補助金について実はデメリットも大きいのです。たしかに使い方によっては会社を助ける事もあるのですが。。。あまりこういった話は聞きませんよね。今回は、補助金申請の仕事を最初から最後までやった僕だからわかる「補助金のデメリット」について解説したいと思います。
【目次】
補助金、助成金の概略
創業時に使える補助金
補助金の落とし穴
まとめ 補助金は手続きが面倒な保険
補助金、助成金の概略
会社を助ける補助金、助成金。同じようで実は内容が異なります。まずは、補助金と助成金の違いについて簡単に説明をします。
補助金
国、自治体などが期間限定(年2回程度が殆ど)で決められた予算の中から、応募者同士でコンペを(事業計画を記載した申請書ベース)して、採点の高い応募者に限定して受給が決まるというもの。
助成金
労働環境の改善など、一定要件を満たせば必ず支給してもらえもの。募集期間は年度毎の通年で(いつでも申請できる)ある事が一般的。
補助金・助成金は年度毎に変更される
補助金・助成金は毎年内容が変更されます。去年募集していたものが今年は募集していない。といった事はよくある事なので注意して下さい。
補助金・助成金手続きを依頼する専門家
よく混同してしまうのですが、助成金を申請手続きできるのは「社会保険労務士」という専門家になります。一方、補助金は「税理士」「中小企業診断士」「金融機関」といった幅広い業種の方が申請手続きをしてくれます。
創業期に使える補助金
一般的に創業期に使いやすいと言われている補助金について、29年度分を元に解説していきます。補助金の内容は毎年変更されますが、これらの補助金は受付期間は変更になるのですが、内容は毎年殆ど同じものです。とはいっても国の都合で変更になってしまう事もありますので了承下さい。
創業補助金
新しく起業する方向けの補助金。
ものづくり補助金
製造業で生産性の高まる設備投資、既存と比較して革新的な新たなサービスを創出する為の設備投資をする際に支給される補助金。
小規模事業者持続化補助金
販路開拓の為の補助金、具体的にいうとWEB 製作費用やチラシ作成、展示会出展などの費用を補助してくれます。
IT補助金
生産性を高める為のIT導入費用を補助してくれます。
補助金のポイント
上記のような補助金にはよく「生産性」「革新的な」といったキーワードがでてきます。
「生産性」とは、仕事の質を上げる、仕事の質は変わらすに労働時間を短縮できる。というようなイメージです。「革新的」とはざっくりと面白いアイディアであればいいでしょう。3Dプリンターを販売したい業者が、似顔絵フィギアも作れる似顔絵屋さん」という事業内容で随分補助金を通したそうです。
また、雇用環境の改善や労働賃金の上昇といった事が審査の加点対象になっている補助金もあります。
補助金の落とし穴
補助金は後払い、事業内容が変わると貰えない事も
補助金は後払いです、まずは一度資金支払う必要があります!こういった情報は聞いた事のある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
補助金は当初提出した事業計画と内容が変わる(売上目標の未達成とは違います)と貰えなくなってしまいます。
当初、事業計画を提出して補助金を貰える事が決定したとしても、途中で事業の軌道修正をしてしまうと、結果補助金が貰えなくなってしまう事があるのです。
一例を申し上げますと、海外に「日本のお米」を輸出するという事業で創業補助金の申請を通過した社長さんがいらっしゃいました。途中で「日本の野菜」の方が需要があると気がつき、「お米から野菜の販売に事業をシフト」させました。この社長さんは、結果創業補助金を受け取る事はできませんでした。「お米」で申請を通過したのに「野菜」の販売にシフトしてしまったからです。
事業を行っていると、自分のやりたいコンセプトはぶれなくても、やり方が間違えていたと修正する事は多々あります。しかし、その結果当初の計画とかけ離れてしまうと、補助金は貰えなくなる可能性があるのです。
しかし、補助金を貰う為に事業を行っている訳ではありませんので、こういった場合は事業を修正するしかありません。
補助金申請の書類は大変な作業です。こういった場合、頑張った補助金申請の書類作成の時間と専門家に支払った手数料は無駄になってしまいます。
事務処理が複雑で大変
補助金とは、その名前のとおり、事業を行っていく上で必要な経費の一部を「補助」するというものです。
「助成金」が従業員の雇用安定の為に「会社に支給」されるのに対して、「補助金」は会社の特定の事業に関する経費を補助するという違いがあります。
その為、補助金を実際貰うためには、当初申請した事業計画通りに経費が使われたかについてチェックを受ける事になります。
このチェックを受ける作業がものすごく大変です。
こちらの経済産業省の補助金処理マニュアルをご覧頂ければいかに面倒くさい作業かが想像つくと思います。読むのも面倒くさいですよね。
書いてある内容をざっくり説明すると
〇最小の経費で事業を行って下さい
〇本当に経費を使ったか証明して下さい
〇会計処理は、補助金の対象となる経費とそうでない経費にキチンと分けて下さい
といったところです。
補助金を申請する時にはこうした補助金が貰える権利を確定させた後の事務手続きの手間についても考慮しておいて下さい。
最小の経費で事業を行う
これは、高額(補助金の種類によって金額は変わりますが)な経費を使う場合は「相見積もり」をとって一番安い所に依頼するという事です。どうしても高額な業者から購入したい場合は「なぜそうしたいかの理由を書面で提出」する必要があります。
事業を進める時、必要な物は仲間の会社から購入する事が殆どだと思います。ちょっと現実的ではありませんね。
本当に経費を使ったか
補助金というのは、どうしても悪用する方を防止する為に審査が厳しい物です。なぁなぁな取引で使った経費に対して補助をしてしまうと税金の無駄使いになってしまいますので許されません。
よって経済産業省は、取引については、「見積を書面で依頼する⇒見積書を貰う⇒発注を書面で依頼する⇒請求書が来る⇒支払をする⇒納品書を貰う」という手続きを踏んで下さいといっています。
ですので一定金額の経費については
➀見積依頼書
➁見積書
➂発注依頼書
➃請求書
➄支払った証明書(領収書など)
➅納品書
これだけの書類を用意しないと補助金を支給してくれないのです。スピード感をもって進むビジネスの実態と乖離していますね。いちいち見積もりを貰うのに取引先に見積依頼者なんて発行しないよ。。。と思ってしまいます。さすが役所仕事ですね。
会計を補助対象事業は区別して
補助金は補助対象の事業に関する経費に対して補助してくれるものですので、会計帳簿もキッチリ区分けして集計する必要があります。
ご自分で記帳するにしろ、会計事務所が記帳するにしろ、これもまた面倒くさい作業です。会計事務所に依頼する場合は事前にその旨お願いしておく事と、処理料金の変動について確認しておきましょう。作業量が増えますので会計事務所の料金を値上げされる可能性があります。
また、補助金受給の為の事業計画作成支援を謳い文句にしている会計事務所はよく目にしますが、その後のフォローが強い事を謳い文句にしている会計事務所はあまり見ません。補助金は審査を通過しないとアフターフォローも経験できませんから。補助金通した事があるのかな?と思ってしまいます。
本当に補助金申請に強い事務所を見分けるためにも、どの程度アフターフォローしてくれるのか確認するようにしましょう。
補助金は返還不要のお金ではない
補助金は何か新しい事業を始める際、その費用を一部補助してあげます。だから失敗を恐れるな!という発想の制度です。ですので、その事業が利益がでるのであれば、受け取った補助金の一部を返還しなければいけないのです。しかも、補助金を受け取った時は収入として税金が課せられます(法人税や所得税)。
〇利益が出たら返還しなければいけない
〇一度受け取った補助金には税金(法人税や所得税)がかかる
〇業者にサポートを依頼した場合は手数料がかかる
こう考えるとあまり美味しくはないかもしれません。ですが、業態(会社か個人事業主か)によっては補助金の返還金額が少なくなるように調整できたりしますので、専門家にはこのあたりのフォローもしてくれるか確認すべきです。
まとめ 補助金は手続きが面倒な保険
如何でしたでしょうか?「補助金申請が得意です!」という業者は沢山いますが、あまりこういった補助金のデメリットを記載している記事がありませんでしたので頑張って作成してみました。
〇手続きが面倒
〇利益が出たら返還しなければならない
という補助金ですが、業種によっては上手く調整できたりもします。もし、何回も言いますが、専門家に依頼をする場合には「どの程度のアフターフォローしてくれるのか確認して下さい。申請件数ではダメです、補助金を通すだけなら誰でも出来ますので。
また、補助金は「失敗を恐れるな!」という保険として考えると悪くないかもしれませんね。物によってはあまり手間が掛からないものもあるので、自分の時間価値を考慮して判断して下さい。